インプラント治療方法・
手術までの流れ・
期間について解説
歯を失った場合の治療法として、入れ歯やブリッジに加えてインプラント治療を検討する方が増えています。
インプラントは人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を装着する方法で、見た目や噛み心地が天然歯に近いのが特徴です。
しかし手術自体への不安や、治療にどれくらいの時間がかかるのか不安があるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、インプラントの治療方法、手術までの流れ、治療期間について分かりやすく解説します。
インプラント治療とは

人工歯を取り付ける治療
インプラント治療は、チタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込み、骨と結合させることで強い安定性を得ることができます。
また、上部構造にセラミックを使用するため天然歯に近い見た目や機能を得られ、入れ歯のように取り外す必要も、ブリッジのように隣の歯を削る必要もありません。
さらに、1本だけの欠損から複数歯の欠損、総入れ歯に代わるオールオン4まで幅広い症例に対応できる治療法です。
インプラント治療が
選ばれる理由

噛む力を回復できる
入れ歯では硬い食べ物が噛みにくいこともありますが、インプラントは天然歯に近い噛む力を取り戻せます。
周囲の歯を守れる
ブリッジのように左右の歯を削らずに済むため、残っている歯に負担をかけません。
長期的に安定しやすい
適切なメンテナンスを続ければ10年、20年と長持ちすることもあり、長期的な予後の良さも評価されています。
治療前の準備と検査

カウンセリング
最初のステップはカウンセリングです。
インプラントは外科的な処置を伴うため、治療は患者様の希望や不安を丁寧に聞き取ることから始まります。
歯の欠損数や部位、見た目の希望、噛み合わせの問題点などを確認し、治療の適応可否を判断します。
また、持病や服薬状況も重要な確認事項です。
糖尿病や高血圧、骨粗しょう症の薬を服用している場合には治療計画に影響するため、全身の健康状態を把握した上で安全に進める必要があります。
精密検査
治療を行う前には必ず精密検査を行います。レントゲンやCT撮影によって、顎の骨の高さや厚み、神経や血管の位置を確認します。
骨量が不足している場合には、骨造成という追加処置が必要になることがあります。
さらに、咬合検査や歯周組織の状態を調べることで、インプラントを支えられる環境かどうかを慎重に評価します。
治療計画の立案
検査結果をもとに、埋入するインプラントの本数や埋入位置、手術の方法、治療期間を具体的に決定します。
必要に応じてコンピューターシミュレーションを行い、ガイドサージェリーを使用することで、より正確で安全な埋入位置を設定できます。
また、費用の見積もりを提示し、治療にかかる総額や支払い方法についても説明します。
口腔環境を整える
インプラント治療は健康な口腔環境の上に成り立つため、むし歯や歯周病がある場合は事前に治療しておくことが必須です。
歯周病菌が残ったままインプラントを埋入すると、治療後にインプラント周囲炎を起こすリスクが高くなります。
また、プラークコントロールが不十分だと予後も悪くなりがちなため、歯科衛生士によるプロフェッショナルクリーニングや正しいブラッシング指導を受け、口腔内を清潔に保つことが求められます。
インプラント手術の流れ

1.一次手術
一次手術では、局所麻酔を行った上で歯肉を小さく切開し、顎の骨に専用のドリルで穴を形成してインプラント体を埋め込みます。
チタン製のインプラントは骨と親和性が高く、体内で拒否反応を起こしにくい素材です。
手術時間は本数や部位によって異なりますが、1本あたり30分〜1時間程度で終わることが多いです。
手術中は局所麻酔によって痛みはほとんど感じず、多くの方は、術後に少し腫れや違和感が出る程度です。
2.治癒期間
埋め込んだインプラント体は、基本的にすぐに人工歯を支えられるわけではありません。
骨としっかりと結合するための治癒期間が必要です。
下顎で2ヵ月〜3ヵ月、上顎では3ヵ月〜6ヵ月ほどかかります。
骨の密度や血流の違いによって期間が変わり、喫煙習慣や全身疾患の有無も治癒のスピードにも影響します。
治癒期間中は仮歯を入れて見た目や咬合を保つ場合もあり、日常生活に大きな支障が出ないように配慮されます。
3.二次手術
インプラント体と骨の結合が確認できたら、次のステップとして二次手術を行います。
治癒によってインプラント体に被った歯肉を小さく開き、人工歯を支えるアバットメントを装着します。
この部品は、インプラント体と人工歯をつなぐ重要な役割を果たします。
二次手術は一次手術よりも負担が軽く、数十分程度で完了します。
4.仮歯の装着と型取り
アバットメント装着後は、歯肉が落ち着くのを待ちながら仮歯を装着します。
この期間に仮歯で噛み心地や見た目などの調整を行い、最終的な人工歯をより良くするための情報とします。
人工歯の装着までの流れ

1.型採り
最終的な人工歯を作るためには、精密な型採りが必要です。
今まではシリコンやアルジネートといった印象材を使用することが一般的でしたが、近年は光学スキャナーを用いたデジタル印象も普及してきています。
これにより、患者様の負担が軽くなり、より精度の高い補綴物を製作できるようになりました。
2.咬合調整
人工歯を装着する際には、見た目だけでなく噛み合わせの調整も欠かせません。
わずかな高さの違いでも咀嚼に不具合が生じたり、顎関節や他の歯に負担を与えたりする原因になります。
そのため、歯科医師は咬合紙を使って噛み合わせを確認し、細かく削合や調整を行います。
3.最終補綴物の装着
完成した人工歯をアバットメントに装着します。
素材にはセラミック、ジルコニア、メタルボンドなどがあり、審美性や耐久性、費用の違いによって選択されます。
4.術後の説明
人工歯の装着が完了した後は、歯科医師から清掃方法や注意点について説明があります。
特にインプラント周囲炎を防ぐためには、毎日のセルフケアと定期的なメンテナンスが欠かせません。
歯ブラシに加えて、歯間ブラシやフロスを使ってプラークを取り除く方法を指導されます。また、数ヵ月ごとに歯科医院での定期検診を受けることで、噛み合わせの変化や歯肉の状態をチェックし、インプラントを長期的に維持することができます。
治療期間の目安

標準的な治療期間
インプラント治療は、一次手術から最終的な人工歯の装着まで通常4ヵ月〜8カ月程度かかります。
下顎は骨が硬く血流が豊富なため比較的早く結合が進みますが、上顎は骨が柔らかいため時間がかかる傾向にあります。
治療期間には手術の回復だけでなく、仮歯で噛み合わせや見た目を調整する工程も含まれるため、個人差が生じやすいのが特徴です。
骨造成が必要な場合
骨の高さや厚みが不足している場合、骨移植やサイナスリフトなどの骨造成が必要になります。
こうした追加処置を行うと治癒に数ヵ月を要するため、治療全体で1年前後かかるケースも珍しくありません。
即時荷重インプラントのケース
条件が整えば、抜歯と同時にインプラントを埋入し、その日のうちに仮歯を装着する即時荷重インプラントが適用できることもあります。
この場合、見た目の回復が早い点がメリットですが、骨や歯肉の状態が良好でなければ行えません。
治療後の注意点と
メンテナンス

セルフケア
インプラントは天然歯のようにむし歯にはなりませんが、インプラント周囲炎という歯周病に似た病気を起こす可能性があります。
そのため、歯ブラシに加えて歯間ブラシやデンタルフロスを用いた丁寧な清掃が欠かせません。
歯とインプラントの境目に汚れが溜まりやすいため、ポイントを押さえたブラッシングを身につけることが大切です。
定期的なメンテナンス
インプラントを長持ちさせるには、3ヵ月に1回の定期的なメンテナンスが必要です。
歯科医院でインプラント周囲をクリーニングし、噛み合わせや歯肉の状態をチェックします。
早期に炎症や緩みを発見できれば、大きなトラブルを防ぐことができます。
生活習慣の見直し
喫煙は血流を悪化させ、骨とインプラントの結合を妨げる大きなリスク要因です。
また、過度な飲酒も免疫機能を低下させ、治癒を遅らせる可能性があります。
これらの習慣を見直すことで、治療の成功率を高められます。
さらに、食いしばりや歯ぎしりの癖がある方は、就寝時にマウスピースを使用するなどの予防策も検討されます。
治療期間が長く
工程の多い治療だが
メリットが多い

自分に合った治療計画で
安心のインプラント治療を
インプラント治療は、失った歯を補う最先端の治療法であり、見た目や機能を回復させることができます。
ただし、手術が必要で治療期間も数ヵ月以上に及ぶため、事前の検査や計画が重要です。
治療後も定期的なメンテナンスとセルフケアを継続することで、長期的に快適に使い続けられます。
歯を失ってお悩みの方は、まずは歯科医院で相談し、自分に合った治療計画を立てることから始めてみましょう。