グラフトレスインプラント治療とは?
メリットやデメリット、
治療方法について解説
インプラントを安定して埋入するためには、十分な骨の高さと厚みが必要です。
骨が足りない場合には、骨移植や骨造成(グラフト)を行ってからインプラントを埋めるのが一般的ですが、近年はグラフトレスインプラント治療という選択肢も登場しています。
グラフトレスインプラントは、その名の通り骨移植を行わずにインプラントを埋入する治療法です。
いくつかの特殊なインプラント形状や埋入技術を用いることで、骨造成なしでも安定性を確保することが可能な場合があります。
ここでは、グラフトレスインプラントの特徴やメリット・デメリット、適応症例、費用の目安まで詳しく解説します。
骨造成を行わずに
インプラント治療を
可能にする技術

ショートインプラント
ショートインプラントとは、一般的なインプラントに比べて短い6〜8mm前後のインプラントを指します。
骨の高さが不足していても、短いインプラントを選択することで神経や上顎洞に触れず、安全に埋入できます。
特に下顎の奥歯付近では、下歯槽神経を避けながら固定できる点が大きなメリットです。
最新のショートインプラントは表面性状の改良により骨との結合力が高まり、従来のインプラントと同等の安定性が得られるケースも多くなっています。
傾斜埋入
傾斜埋入は、骨の高さや幅が足りない部分を避け、骨が残っている方向へ斜めにインプラントを埋入する方法です。 特に上顎の奥歯では、上顎洞という空洞が近くにあるため、従来はサイナスリフトという骨造成が必要でしたが、傾斜埋入することでこれを回避できます。
また、下顎の奥歯では、下顎管内の神経を避けつつ長いインプラントを斜め方向に固定できるため、初期固定を高めやすいという利点があります。
ただし、傾斜埋入は角度や位置の精密なコントロールが必須で、3Dシミュレーションやサージカルガイドを用いた高度な計画と技術力が求められます。
オールオン4
オールオン4は、全ての歯を失った場合に、片顎あたり4本のインプラントで12本前後の人工歯列を支える治療法です。
前方の2本は垂直に、後方の2本は傾斜させて骨の残っている部分に埋入することで、骨造成を行わずとも広い支持面積を確保できます。
即日で仮歯を装着できる即時荷重にも対応しやすく、手術当日から見た目や会話の回復が可能な場合が多いのが特徴です。
特に骨吸収が進んだ高齢者や、早期に咀嚼機能を取り戻したい方に選ばれています。
ただし、4本のインプラントで全体を支えるため、適切な咬合設計が成功の鍵となります。
オールオン4とは?グラフトレス
インプラントの
メリット・デメリット

グラフトレスインプラントの
メリット
手術の侵襲が少ない
骨造成を伴わないため、切開や剥離の範囲が小さく、手術時間も短くなります。
骨移植を行う場合には、自分の骨を採取するために別部位を手術するケースや、人工骨を広範囲に充填する工程が必要となり、手術時間や出血量も増えます。
グラフトレスではこうした追加処置が不要なため、術後の腫れや痛みが軽く、内出血の発生も少ない傾向があります。
患者様によっては翌日から仕事や家事に復帰できることもあり、高齢者や全身疾患のある方にとっても身体的負担を抑えられる点が大きなメリットです。
治療期間が短縮できる
骨造成を伴う場合は、移植した骨が定着、成熟するまで3ヵ月〜6ヵ月、場合によっては半年以上の待機期間が必要です。
その間はインプラント埋入ができないため、最終的な人工歯の装着まで1年以上かかるケースもあります。
グラフトレス法では、診査、診断の後、条件が整えばすぐにインプラント埋入が可能で、場合によっては抜歯即時埋入により抜歯当日に埋入できることもあります。
さらに、初期固定がしっかり得られた場合には即時荷重にも対応でき、早期に見た目や咀嚼機能を回復できる可能性があります。
忙しくて長期通院が難しい方や、早く噛めるようになりたい方に向いています。
費用負担を減らせる
骨造成では、骨補填材や再生膜などの材料費、追加手術費がかかります。
相場として1部位で10万〜30万円の追加費用が発生します。
グラフトレスではこうした費用が不要なため、1本あたりでも数万円〜十数万円、複数本や全顎治療では総額で数十万円以上の差が出ることもあります。
また、手術回数や通院回数が減ることで、通院の交通費や仕事の欠勤日数も少なくて済むため、経済面、時間面の両方で負担が軽くできます。
グラフトレスインプラントの
デメリット・リスク
適応症例が限られる
グラフトレス法は万能ではなく、骨量不足が軽度〜中等度のケースに限られます。
例えば、奥歯の骨が2mm〜3mmしか残っていない場合や、骨質が非常に柔らかい場合には初期固定が得られず、治療の成功率が下がります。
また、骨が残っていても糖尿病や骨粗鬆症、喫煙などの要因によって骨の治癒力が低下している場合は、適応外になる可能性があります。
術前のCT診断と全身状態の確認が重要になります。
長期的に見た安定性が課題
骨造成を行って十分な支持骨を確保した場合と比べると、グラフトレスでは骨の支持面積が少ないため、噛む力が集中すると負担が増し、長期的に骨吸収が進むリスクがあります。
特に、奥歯で硬い物をよく噛む習慣がある方や、食いしばり、歯ぎしりのある方は注意が必要です。
負担を分散する補綴の形態や咬合調整、必要に応じたナイトガードの使用などを検討する必要があります。
高度な技術が必要
限られた骨を安全に利用するためには、CT撮影と3Dシミュレーションを用いた緻密な治療計画が必須です。
ショートインプラント、傾斜埋入などの特殊技術に精通した歯科医師でなければ、角度や位置の誤差が生じ、神経損傷や上顎洞穿孔などのリスクが高まります。
また、サージカルガイドを用いて計画通りの位置に埋入する精度管理も重要で、経験豊富な歯科医院を選ぶことが成功の鍵になります。
骨造成を伴う
従来法との比較

治療期間
従来の骨造成法では、骨移植後に移植骨が定着するまでの治癒期間が必要です。
上顎洞底挙上術やGBRでは3ヵ月〜6ヵ月、場合によってはそれ以上の待機期間が必要で、その後にインプラント埋入とさらに治癒期間を経て、最終的な人工歯を装着します。
そのため、治療全体が6ヵ月〜12ヵ月になることも珍しくありません。
一方、グラフトレス法では骨造成を省くため、この待機期間が不要となり、3ヵ月〜6ヵ月で完了できるケースもあります。
特に早く噛めるようになりたいという患者様にとって大きなメリットです。
費用面
骨造成を伴う場合は、手術費用とは別に骨補填材や再生膜などの材料費、追加手術費が発生します。
相場としては10万〜30万円程度の追加費用がかかります。
これに対し、グラフトレス法ではこうした費用が発生しないため、総額を抑えられる可能性が高いです。
複数本のインプラントや全顎治療の場合、この差はさらに大きくなります。
手術侵襲
骨造成は移植や骨削除の範囲が広く、出血、腫れ、痛みといった術後反応が強く出る傾向があります。
グラフトレス法は既存骨を最大限利用するため、切開や剥離の範囲が小さく、手術侵襲が少ないのが特徴です。
結果として、術後の腫れや痛みが軽く、回復も早い傾向にあります。
治療後の
メンテナンスと予後

グラフトレスだからこそ重要な
メンテナンスのポイント
グラフトレスインプラントは、骨造成を行わない分、手術回数や治癒期間が短縮できるのが大きなメリットです。
しかし、骨移植を行わないため、インプラントを支える骨の量や質は治療前の状態に依存します。
そのため、治療後のケアを怠ると骨の吸収が進み、インプラントの安定性に影響を与える可能性があります。
特に、歯周病菌によってインプラント周囲炎が起きると、天然歯と違って回復が難しく、最悪の場合インプラントを失うこともあります。
日常的なプラークコントロールと、歯科医院での定期的なメンテナンスが何よりも重要です。
長期安定性を高めるための
通院頻度
治療後1年間は、術後の経過観察として3ヵ月に1回程度の定期検診が必要とされます。
この期間は骨や歯肉の安定を確認し、噛み合わせの微調整やクリーニングを行います。
2年目以降も、半年に1回は必ず通院し、インプラントと周囲組織の状態をチェックすることが望ましいです。
また、骨造成を行ったケースよりも骨の厚みや高さに余裕が少ない場合があるため、より慎重な観察が求められます。
セルフケア方法のポイント
自宅でのケアでは、歯間ブラシ、フロスを使って、インプラント周囲の汚れを丁寧に除去します。
研磨剤を多く含む歯磨き粉はインプラントの表面に細かい傷をつけてしまう恐れがあるため、低研磨タイプやジェル状の歯磨き剤が安心です。
また、就寝中の歯ぎしりや食いしばりがある場合は、ナイトガードの使用で負担を軽くしましょう。
日々のケアと定期的なプロフェッショナルケアを両立させることで、グラフトレスインプラントでも長期的に安定した状態を維持できます。
メリットとデメリットを
理解して

グラフトレスインプラント治療は、骨造成を行わずに既存の骨を使ってインプラントを埋入する方法で、手術の負担や治療期間、費用を減らせるのが大きなメリットです。
一方で、骨の条件が合わなければ適用できず、長期的な安定性や耐久性には注意が必要です。
治療を検討する際は、CT診断やシミュレーション設備が整っており、グラフトレス症例の経験が豊富な歯科医院を選ぶことが大切です。